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 就職活動の後ろ倒しで、学生や企業はどのように動いているのか。昨年までと異なる就職活動の現状について、就職情報サイト「マイナビ」の吉本隆男編集長(54)に聞きました。

■二極化、高密度、長期化

 ――新卒採用の会社説明会の解禁が12月から3月に、選考開始は4月から8月へと後ろ倒しとなりました。今年の就職活動の状況はどのようになっていますか。

 「今回のスケジュール変更によって、就活・採用活動がどういう形で進行しているのか『不透明になった』と、学生側も企業側も感じているようです。まず学生の状況を見ると、昨シーズン以上に二極化していると感じます。インターンシップ(就業体験)に参加し、企業への理解をしっかり深めてから就活に臨んだ意識の高い学生と、後ろ倒しになって『余裕ができたのではないか』というノンビリ層にはっきり分かれました。もう一つの特徴は、3月に入ってすぐに就職情報サイトを通じた企業へのエントリーが始まり、この同じ3月のうちに企業説明会やエントリーシート(ES)の提出などが相次いで実施されていたことです。学生の活動は密度の高いものになりました。一方、昨年夏のインターンシップの時期から活動していた学生にとっては、活動期間は1年を超えることになり、結果として長期化したとも言えます。」

 ――二極化は前回までもあったのでは?

 「しっかり準備する学生と、そうでない学生の差はこれまでもありましたが、就活解禁が3月からとなって、学生の意識の差が顕著に表れているようです。前向きに準備する学生は、就活準備期間が長くなり、自己分析や企業研究がすでに進んでいます。3月のスタート時点から活発に企業説明会に予約をするなど、アクティブに動いていました。そうではない人は、動きが鈍いように感じました」

■企業ごとに採用時期はさまざま

 ――企業の動きはどうなっていますか。

 「経団連の指針上の選考活動開始は8月からですが、それ以前に選考を行い、内々定を出す企業も多くあります。しかし、今シーズンは売り手市場のため、企業にとっては内定辞退のリスクが高く、学生に内定を出しても8月以前に意思決定してもらうことは難しいと思います。8月まで学生とコミュニケーションをとって、自社を第一志望としてもらえるよう努力をするようです。選考開始時期といった採用スケジュールは、業界や企業規模によっても違いがあるため、混乱する学生もいるかもしれません」

 ――企業の動きとしてITや外資系、新経済連盟など経団連の指針から外れているところはどう動いていますか。

 「独自のスケジュールで進めています。こうした企業が早く進めるのは、早期から優秀な学生に会いたい、という側面もあると思います。」

■今年のピークは二つの山に

 ――昨シーズンまでは内々定出しのピークは5~6月でした。今年はどうでしょうか。

 「当社が行った調査によると、内々定を出すピークは5月と8月となることが見込まれます。GW明けから出すところもあるでしょう」

 ――8月より前に内々定を出すって言うのは、それまでに選考をしているということですよね。

 「経団連非加盟の企業や、採用に苦戦しがちな中小中堅企業は、8月まで待ってられないという実情があるのだと思います。説明会を開催し、ESを提出させて、面接に呼んで内々定というのが一般的な段取りです。5月に内々定を出すには、3月から一気に選考のプロセスを進めないといけません」

 ――昨シーズンまでは会社説明会の解禁が12月。4月1日の選考開始まで4カ月間あったが、今年は解禁の3月から2カ月間ほどで最初の山が来てしまう。学生と企業のミスマッチが増える可能性がある。

 「昨年までは4月後半から、まずは大手企業を中心に内々定を出していき、学生は大手企業に落ちても、もう一度視野を広げて中小中堅企業や同業界の別会社に目を向ける、時間的な余裕がありました。今年は大手の選考の方が中小中堅企業よりも後にくるため、早期から視野を広げて活動しておくことが重要です」

 ――企業は5月と8月の内々定出しがうまくいかなかったら採用期間はもっと長くなる。

 「企業へのアンケートでも、年内いっぱいは採用活動を続ける必要があるかもしれないと言うところが多い。8月に入って内々定辞退をしてしまった学生の補充をどうするか、8月以降も活動する必要があります」

 ――インターンシップの山は3年生の8月と2月。2月は採用直結型とも言われてもいますが。

 「採用直結型の形式をとっているのは一部の企業です。大多数の企業は、業界理解・企業理解をしっかりさせる意味合いが大きい。3月になったらちゃんとエントリーしてほしい、その前にしっかり会社のことを理解してほしい、ということだと思います。インターンシップの段階で、すぐにでも採用したいと思える学生に会えるのはまれなケースなので、まずは企業側としては広く知ってほしいという目的だと思います」

 ――近年は大学全入時代で、大卒者数は最高水準。一方で、企業側の採用数も徐々に増えています。今回は学生にとって本当に売り手市場なんでしょうか。

 「企業の採用意欲は増している。人手不足になっているからです。しかし、企業にとって必要な人材を採りきれるかどうかは難しい。やっと社員を増やせる景況感になってきたが、採用数を充足させるために企業が採用基準を下げることは考えにくいため、すべての学生にとって優位な市場になったとは言えません」

 ――就活生が心がけることは。

 「8月以降、複数の企業から内々定を得ている場合、企業の選択が迫られます。自分が何を基準にして会社を選ぶか、将来のキャリアを見すえて考えておくべきです。8月以降も採用活動は続くので、内々定が決まらなかった学生はあきらめないで欲しい。特定の企業だけでなく、企業規模や業界を広げることもやはり必要です」

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■記者のひとこと

 昨シーズンまでは、就活をひととおり終えた学生は、うまくいかなければ仕切り直して中小中堅企業へ取り組む、という流れがありました。今回は、中小中堅企業の採用時期が大企業より先か、同時平行となりそうです。一方で、売り手市場のため、学生が大手企業への関心を強めている傾向もあるようです。ただ大手企業ばかり狙っていると、採用ピークを過ぎた8月以降になっても企業内定の「持ち駒」がない、という事態になりかねません。企業規模の違う企業へも視野を広げてみてはどうでしょうか。(内海智裕)