※日経エンタテインメント! 2024年2月号の記事を再構成
宮野真守、津田健次郎、梶裕貴など、アニメのメーンキャストには長らく同じ面々が並んでいたが、新世代も頭角を現し始めている。声優が人気を獲得するためには、何よりヒットアニメへの出演や当たり役が必須だが、2024年が飛躍の年となりそうなのが、累計発行部数1000万部突破の大ヒットコミックスが原作のテレビアニメ『ダンジョン飯』で、主人公のライオス・トーデン役に抜てきされた熊谷健太郎だ。
沖縄出身の29歳。ヒューマンアカデミー那覇校で学んだのち、現在の事務所の養成所に入所し、15年に正式に所属。18年『グランクレスト戦記』で初主演をつかむと、『池袋ウエストゲートパーク』(20年)ではドラマで長瀬智也が演じた主人公のマコト役を好演するなど、着実にキャリアを積んできた。
声優という職業を意識したのはたしか中学2年のとき。たまたまテレビで宮野真守さんのミュージックビデオを見て、「このアーティストさんすてき!」と思ったのが始まりでした。僕は人並みにアニメやマンガを見るくらいだったので、声優という職業があることも分かってなく。それが(宮野が主演した)『機動戦士ガンダム00』を見たときに、クレジットの1番上に宮野さんのお名前を発見して、それをきっかけに声優という職業があるんだと知りました。
将来の夢が変わりやすい子どもだったんです。サッカー選手、学校の先生、プロレスの会社の社員になりたいとか。「声優になったら役としてやってみたかった職業が全部できるのでは?」と思い、すごく魅力的に感じて目指すようになりました。高2から月1回レッスンを受け、恩師にも出会い、養成所などを経て今があります。
ライバル…なんておこがましいですが、阿座上(あざかみ)洋平さん(『機動戦士ガンダム 水星の魔女』グエル役など)は意識している存在です。歳は阿座上さんが少し上で先輩ですが、お芝居はすてきで勉強になりますし、一緒にコントをしたり関わる機会も多くて。刺激を受け、追いかけている存在です。
転機になった作品を問うと、元来の真面目さ故にぶつかったたくさんの壁があったようだ。
1つは事務所に所属して初めてのオーディションで握野英雄という役をいただいた『アイドルマスター SideM』です。ゲームからアニメへと展開され、アリーナやドームなど何万人もの前で役としてステージにも立たせてもらったり。この出合いがなければ今の自分はいないと言っていいです。あと、デビュー最初期に出演した『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』は僕の一言を収録するためにアフレコで先輩たちを待たせてしまうことが何度もあり、本当に苦しんだ作品なんですけど、そのときに音響監督さんから「もっと肩の力を抜いていいぞ」という言葉をもらったのは大きかったです。当時は頭がガチガチに凝り固まって自分で決めたものに縛られていたなと。キャラクターは僕1人だけで作るものではないので、余白を作る――様々な作品に関わらせていただくなかで、柔軟さも演じるうえで大事だという解釈に今は行き着き、台本と役にどう向き合うか変わるきっかけになりました。
そして初主演の『グランクレスト戦記』は忘れられないです。いいことも悪いこともあったというか。座長として現場を引っ張らねば、頑張らねばというのがよくない方向にいってしまい、言葉を選ばず言うと、あれが天狗になっていたということなんだろうなと。完全にから回って…。でも真っすぐ向き合い叱ってくださる方がいたのが本当にありがたいですし、現場でのあり方など、今につながる気づきをもらえたのは良かったなと。振り返ると、人と縁に恵まれてきたなと感じますね。
話題作に主演で飛躍の年へ
1月からは、主演作『ダンジョン飯』の放送が始まった。
『ダンジョン飯』は冒険者として討伐していたモンスターを料理して食べるというギャップと、そこに生きる人たちの絶妙なリアリティーが魅力の作品だと思います。分厚いファンタジーでありながら、コメディ的な面白さもありドラマも濃厚で、アクションもある。好きな作品のオーディションは怖いんですけど、でもやりたい! と思いながらオーディションには挑みました。ただ正直、ライオス役は自分に合うんじゃないかなという気持ちもあって(笑)。原作を読み「僕はこう思いました」を楽しみながら演じられたので、受かったときはうれしかったです。
僕自身がこの作品をきっかけに声優としてどうなりたいとかは考えていなくて、ファリン役の早見沙織さんの言葉をお借りすれば、1つの食材として真摯にありたいです。宮島善博監督はじめ、スタッフさんの作品への深い愛が伝わるフィルムになっているので、たくさんの人に見てもらいたいです。






























